俺が、君を好きな気持ち。
溢れだして止まらないんだってこと。
きっと君は知らない。



「十代目!」

あぁ、夢の中にまで、君は居るんだ・・・
これじゃまるで、依存症。

「起きてください、十代目!」
「ん・・・」
「おはようございます、十代目」
「獄寺君」

驚いた。
夢じゃなかったんだ、君の声は・・・

眠たい目を擦って、まだ覚醒しきらない頭で考える。
さっきの声は、夢じゃなくて現実で俺を呼ぶ君の声。
俺に笑いかける顔も、全部、ホンモノ。

「十代目、どうかなさいましたか?」

不思議そうに俺の顔を覗き込む君。
こんな顔、俺以外の誰も知らない。
俺だけの特別。

「なんでもないよ・・・」

体を起こして、獄寺君に凭れるように抱きつく。
少し慌てて、それから嬉しそうに俺を抱きしめ返してくれる。
俺より少し高い体温が心地良い。
鼻先を掠める煙草の臭いも、彼の存在を強調して俺は何かに安堵する。

「今朝は何だかいつもと違いますね・・・
本当に大丈夫ですか?」

真剣な目が、俺を捕らえる。
大丈夫と答えたいのに、俺の口は開かない。
その内、獄寺君が目を見開いて俺を凝視した。

「十・・代目・・?」
「何でもないよ。
すぐ着替えるから、先に下で待っててくれる?」
「・・・・分かりました」

彼の足跡が遠ざかり、俺はさっさと着替えを済ます。
洗面所に行って、自分の顔に苦笑いした。

「(これじゃ、獄寺君が心配するのも当然か)」

酷い顔、そう表現するのがぴったりな、自分の泣き顔。
鏡に映ったその顔を洗いながすように顔をあらい、歯を磨いて玄関に向かった。

「お待たせ」
「十代目・・・あの・・・」
「急がないと学校遅刻しちゃうよ」

獄寺君の話を遮って、俺は走る。
後から獄寺君の足音がして、俺の手を掴む。
俺は立ち止まって、獄寺君を見つめた。
彼は一瞬だけ、不安そうな顔をしたと思ったら、にっこり笑った。

「手、繋ぎましょう?」

俺より少し大きくて暖かい手が、俺の手を包むようにして握られる。
言葉には出来ない幸福感と恥ずかしさが一気に込み上げて、俺は俯く。
彼は優しい。
いつだって、俺を思ってくれている。
今も、本当は聞きたいだろうに、何も聞かないでいてくれる。
俺にだけ向けられる優しさに、満たされていく感覚に笑みを零し、顔を上げた。

「うん」
「行きましょう」

軽く手を繋いで、学校までの道を走る。
走りながら、いっそずっとこのままで居られたらなんて事を思った。
周りに公言出来ない俺たちの関係。
人気がある君に、女子が群がっている処見るのも、彼の好きな物を聞かれるのも、
本当は嫌だから。
だかた・・・どうせなら・・・・

「ツナくーん!」

聞き覚えのある声に、意識を引き戻される。
いつの間にか教室の前まで来ていた。
隣で獄寺君が機嫌悪そうに顔を歪ませた。

「おはよ、ツナ君!」
「京子ちゃん、おはよ」
「ツナ君たちいつも一緒で、本当に仲が良いよね」

屈託の無い、純粋な、俺が嘗て好きだった笑顔。
太陽みたいな笑顔で紡がれた言葉が、今の俺には痛かった。

「そうだね」

気付かれないように、いつもみたいに、笑って。
獄寺君の方を向いて、苦笑い。
そしたら彼も、苦笑いを返してくる。

「(違う、ホントは・・・)」

「獄寺くーん!今朝マフィン作ったの、受け取って!」
「私も!手作りのクッキー作ったの!」

いつの間にか、群がってくる女子。
解けそうになる手。
此処で叫べたら、どれだけ良いんだろう。
獄寺君は、俺の恋人なんだと、そう、叫べたら・・・

「ツナ君、どうしたの?」
「え・・・いや・・・別に、何でもないよ?」
「嘘、だってツナ君泣いてる・・・
どこか痛いの?」
「ちがっ、ホントに何でもないんだ。
ただ、目にゴミが入っただけ」

苦笑いを向けて、何でもないんだと目を擦った。
いつの間にか、繋いでた手が離れてて、獄寺君との距離が開いている。
見ていられない、見たくない。

「ツナ君!!!」

京子ちゃんが呼ぶ声も聞かず、教室を飛び出した。
チャイムの音が、遠くで聞こえている。
普段なら慌てて教室に戻るのに、今の俺にはそんな事はどうでもよかった。




「はぁっ・・・はぁっ・・・」

辿り付いた先の、誰もいない屋上。
荒い息を落ち着かせるように、俺は寝そべって空を見上げた。
蒼い、蒼い空が広がってる。



胸が痛くてしょうがなくて、



きつくきつく握ってみるけど、



息がとまりそうなくらい痛くて、



でもどうしようも無くて、



ただ、泣くしかなくて、



俺は声を殺して泣いた。




「十代目!!」
「獄寺・・・君・・・」

体を起こして顔を向けると、安心したような顔をした彼。
うっすらと汗をかいてる。
きっと、俺が居ないのに気付いて焦って探しに着てくれたんだろう。

「よかった・・・十代目に何かあったらと思うと・・・」
「ごめん・・・大丈夫・・・」

強く、強く抱きしめられる。
痛いくらい。

「今日は本当に・・・朝から変です」
「・・・うん」
「俺には・・・訳を話して・・・くれないんですか?」
「・・・嫌だったんだ」

君が、女子に囲まれているのを見るのが。
嫉妬に狂ってしまいそうなくらいに。

「十代目」
「好きなんだ・・・君が・・・だからっ」
「・・・泣かないでください」

煙草の臭い。
俺の瞼にキスをする、獄寺君の唇。
優しく頭を撫でる手。
囁くように、愛しさに満ちた声。

「俺は、貴方だけのモノですから」

そうでしょう?

そう言って、笑った顔に、釣られて笑った。
俺が笑って、君がもっと嬉しそうな顔をして。
たったそれだけで、俺は幸せに満たされている。



君が好きで、


大好きで、


だからずっと、


このまま二人で。



溢れそうな想い

その名は愛情。



最近獄ツナブームです。
きっと昨日某アニメイトで獄ツナ本を買ったからだな。
うん。
もっとラブラブにしたかった・・・
今度はもっと当分多めでがんばります!! 
    

inserted by FC2 system